4.水圧輸送管 (Hyd)



4−a.構造及び特徴


 水圧輸送管の概略を図4−1に示す。駆動ワイヤ−によって試料の入ったアルミ製カプセルを炉心の中心部に送り込む。従って反応度変化に注意する必要がある。カプセルは水密になっていないので、この点十分注意する。KUR照射設備の中では、最高の熱および高速中性子束が得られる。高速中性子スペクトルは大体核分裂スペクトルに近い。(図4−2参照)水圧輸送管の概略図は右のとおり。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

図4−1水圧輸送管の概略図


試料の材質、量、炉心配置等によって違うが、
熱出力5000kWにおける中性子束等は大体次の通りである。

熱中性子束φth =8.2x1013(n/cm2/sec)
熱外中性子束φepi =6.0x1012(n/cm2/sec)
高速中性子束φf =3.9x1013(n/cm2/sec)
金のカドミ比Rcd =3.9
ガンマ線量率Dγ =3.0x109R/h
照射中雰囲気温度 炉心冷却水温度+10°C(試料によりかなり高温にも)

図4−2水圧輸送管照射位置での中性子スペクトル


4−b.使用状況


所外、所内共に、かなりの利用頻度がある。


4−c.試料の取扱い


カプセルへの試料封入はKUR運転班員が行う。
実験者は試料を持って制御室に行き、試料封入後
原則として炉頂サブプ−ルよりKUR運転中
行われる試料の挿入および取出しに立ち会う。

なお、カプセルの取り出しは放射線管理の当番者が立ち会いの
もとにKUR運転班員が行う。試料によってサブプ−ル水面上の
放射線量率が高く、またサブプ−ル水も放射性なので取扱いには
注意する。
照射後のカプセルは直ちにホットケ−ブ室へカプセル移送管を通じて
移送する。実験者は、あらかじめ試料取り出しを実験設備管理部員に
依頼してから、炉頂カプセル操作の立ち会いにあたる。また、炉頂と
ホットケ−ブの連携の必要性から予定の時刻を厳守する。


4−d.カプセルの開封


原則としてカプセルの開封は
ホットケ−ブ内にて行う。





4−e.異常時の処置




異常事態発生の場合は、当直運転員、
中央管理室、設備担当者に連絡し、
その処置を依頼する。










図4−3水圧輸送管カプセル

4−f.照射の条件


1)試料容器(カプセル)

材質: アルミニュウム
寸法: 内径22.0mm
保管場所: KUR制御室
見本: ホットラボ準備室









2)試料封入およびテスト方法と注意

試料封入は原則として石英ガラス溶封またはアルミニュウム管圧接封入とする。
内部の圧力は絶対圧0.5気圧程度の減圧とし、この場合ヘリウムガスに置き換える
ことが望ましい。封入後は熱湯内に入れて発泡のないことを必ず確認すること。
試料は照射中石英ガラス、SUS、アルミニュウムなどの金属等と大きな化学反応
を起こさないこと。また、試料が粉末、水溶性物質、ガス発生物質、発熱性物質
(発熱計算必要)の場合には十分注意する。

特にリチウムやホウ素及びその化合物は発熱と反応度変化の点で注意。これらの
物質の照射に際して、あらかじめニュ−マ等で、予備照射を求めることがある。
また、これらの物質の照射は当初5時間を限度とし、異常がなければ、同一条件
の場合に限り、この制限は解除される。なお、炉心への挿入に先立ち、KUR
運転班員がカプセルの内容を安全性の立場から点検する。全重量については特に
制限はないが、カプセル内は蒸留水で充満し、ボイドによる原子炉の反応度効果
の軽減を図り、カプセルが水中に沈むようにする。

3)試料以外の充填物

試料以外の物をカプセルに封入する場合は、
その物質名、量、形状、誘導放射能などを
KUR.KUCA照射使用記録に記載する。
カドミュウム被覆照射は全量で8gまでとする。
(ただし、全表面積は10cm2以下)

4)照射時間

原則として5時間以上、10時間以内、
時間的に余裕がある時に限り20時間
以内とする。