3.圧気輸送管



3−a.構造及び特徴


ポリエチレン製のカプセル(図3−3参照)に封入した試料を、炭酸ガスの圧力
を利用して、簡単に試料照射が行えるこの照射システムは、独立した3系統から
なっている。3系統の圧気輸送管の炉心内の位置を図3−1に、またステ−ション
の配置図を図3−2に示す。熱出力5000kWにおける中性子束及び照射温度等の値は
試料や炉心位置などによっても変わるが、代表的な値をこの下の表3-1、表3−2に示す。
また、圧気輸送管の代表的な中性子スペクトルをPn−3について図3−5に示す。

表3−1.圧気輸送管の諸特性

Pn−1 Pn−2 Pn−3
熱中性子束φth(n/cm2/sec) 1.9x1013 2.8x1013 2.3x1013
熱外性子束φth(n/cm2/sec) 6.5x1011 1.1x1012 8.4x1011
高速中性子束φth(n/cm2/sec) 3.2x1012 6.0x1012 4.8x1012
金箔によるカドミ比 6.8 5.8 6.2
ガンマ線量率(R/hr) 6.0x107 1.2x108 7.0x107

表3−2.照射中の雰囲気温度

5,000kWでの照射時間と温度
照射時間 10分 30分 60分
Pn−1 48-55℃ 53-60℃ 59-67℃
Pn−2 60-69℃ 70-80℃ 76-87℃
Pn−3 53-60℃ 63-72℃ 70-80℃

なお、照射中の温度上昇による試料の変質、カプセルの溶融をさけるため、
炭酸ガスの強制循環冷却を行っている。

3−b.使用状況


所外、所内ともに使用頻度が高く、特に、火曜日、水曜日の昼間の照射希望が多い。
放射化分析等、広範囲の利用がある

3−c.操作方法


カプセル挿入に先立ち,KUR制御室に,Pn設備名,操作者の所属,氏名,照射番号
(通常下3桁でよい)及び照射時間を告げる。操作は原則として所内連絡者が行う。

3−d.異常時の処置


照射中、試料やカプセルの異常な温度上昇をさけるため、炭酸ガスによる冷却を
行っている。この冷却系が停止すれば、約50秒で自動的に制御棒の一斉挿入が動作
し、KURは停止する。従って、照射中実験者は原則として操作盤付近に居なければ
ならない。異常が発生した場合は、実験者は、KUR制御室及びホットラボ管理室
と連絡をとって、直ちにカプセルを取り出すなど必要な処置を取ること。
非常時の取り出し操作を行った場合、必ずカプセルの帰還及び異常の有無を確かめる。
制御室からの操作の場合、特に注意する。

図3−3圧気輸送管用カプセル


3−e.照射の条件


1)試料の照射容器(カプセル)図3−3参照

[材質]:ホリエチレン
[寸法]:内径24.6mm、長さ:98mm
[保管場所]:ホットラボ準備室

(現在は、射出成形高密度ポリエチレン.ショウレックス
6050を使用。)
(もし、その他の材質のカプセルを使用する場合は、
安全委員会で審査される。)

2)試料封入法(原則として利用者が行う。)

図3−4カプセルの蓋の封じ方

試料は10g以下とし、直接カプセルに入れずに
ポリエチレン製の袋や容器などに入れる。
試料が、粉末、水溶性物質、ガス発生物質、
発熱物質である場合は十分に注意する。
特に核燃料物質の場合には、石英管に封入
すること。
なお、試料の前後に十分緩衝材(綿、ガーゼ等)
を詰める。
カプセルの蓋の封じ方を、図3−4に示す。
蓋を確実に締め、リベット穴を備え付けの
ボール盤を利用して3カ所あけて、所定のポリエチ
レン製リベットを差し込む。
「カチッ」と音がして、リベットの戻りが開くこと
を確認する。
資料を封入したカプセルはもう一度通しゲージを通
す。スムーズに通過しない場合は原因を調べてやり
直す。

3)カプセルの開封(原則として利用者が行う。)

カプセルの開封は必ずホットラボ施設のフード内、もしくはグローブボックス内で行う。
試料が粉末の場合には、試料の飛散に十分注意する。

4)試料以外の充填物

試料以外のものをカプセルに同時封入する場合、その物質名、量、形状、誘導放射能
などについても詳しくKUR,KUCA照射使用記録に記載する。
カドミウムの被覆照射は、厚さ1.0mm以下、一重巻とし、かつ試料を含めた全重量は
10g以下とする。

5)照射時間

カプセルの照射時間は、最高1時間までとする。ただし、カドミウム被覆照射の場合
には5,000kW以上では1分以内とする。炉心構成によっては、制限を加えることがある。

6)照射申込み時の注意

照射後の予想放射能が3.7x1010Bqを超える場合は、原則として照射はPn−2
(ジュニアケ−ブ)で行う。核燃料の照射は、Pn−2でしか行えない。
なお、Pn−3では、1時間照射のような長時間の照射は、できるだけ行わず、
数分以下の短時間照射を優先的に行うよう照射スケジュ−ルを組んでいる。

3−f.ドライアイス照射


試料を低温に保ちながら照射するためにドライアイス入り照射が可能である。
詳細は実験設備管理部.ホットラボ班の管理室当番等に問い合わせる。

3−g.その他


圧気輸送管Pn−1ステ−ションには、照射後のカプセルをトレ−サ棟に輸送
できる圧気輸送管設備(別名エクステンションニュ−マ)がある。この使用を
希望する時は、あらかじめその旨を[KUR.KUCA照射使用記録]に記入する。
なお、カプセルの線量は表面から10cmの位置において1mSv/hr以下と
する。詳細は実験設備管理部.トレ−サ棟班に問い合わせる。




図3−1圧気輸送管の炉心内位置




図3−2ステ−ションの配置図




図3−5圧気輸送管の代表的中性子スペクトル(Pn−3)