18.重水中性子照射設備(DO)


18−a.構造及び利用形態


 重水中性子照射設備(以下「重水設備」)は、重水熱中性子設備と呼ばれる原子炉
施設の部分とそれ以外の実験装置の部分から構成されている。重水タンク設備、重水
設備遮蔽扉(以下「遮蔽扉」)、重水設備照射室及び同出入り口遮蔽扉(以下出入口
遮蔽扉)、重水上下水設備などは原子炉施設であり(図18−1参照)、大型試料
 輸送システムを構成する大型試料輸送台車及び治療用コリメ−タ(図18−2参照)
、簡易施療室、照射レ−ルは実験装置である。
平成7年度の改修後、医療照射利用をはじめとする大型試料を用いた実験がKUR
を定格出力連続運転中でも大型試料輸送システムを用いて出来るようになっている。

 今後の利用形態は

(1)KURの一旦停止を伴う利用、
(2)連続運転中は、照射レ−ル装置、あるいは大型試料輸送システムの利用

の2つである。

[照射レ−ル]
1)5MW連続運転中に照射室の外から手動により試料の出入れ操作を行い利用する。
2)試料の最大の寸法は、幅10cm,高さ10cm,長さ20cm程度、重量は1kg以下である。

[大型試料輸送システム]
1)5MW連続運転中に照射室に出入りし、大型試料輸送台車を操作して利用する。
2)試料の最大の寸法は、幅200cm,高さ180cm,長さ200cm程度、重量は2t以下である


18−b.照射上の諸特性


中性子のエネルギ−スペクトルを変化させることが出来る重水スペクトルシフタ
とカドミウム及びボラール製の熱中性子フイルタ−が内蔵されている。連続運転
中にこれらを操作することにより、照射位置等を変えずに中性子照射条件(照射
モ−ド)を変更できる。
通常、照射モ−ドは、基準熱中性子照射モ−ド「00-0011-F」、基準混合中性子照射
モ−ド「00-0000-F」、基準熱外中性子照射モ−ド「C0-0000-F」の3つの中から選択
(表18−1及び18−2参照)
中性子エネルギ−スペクトルの一例を図18−3に示す。



表18−1照射モ−ドの表記方法と状態の関係

*:中央部ビスマスは照射室側から250Φx50t,200Φx50t,150Φx134tmm3が取出し可能。



表18−2各照射モ−ドでの利用特性(KUR,5MW時)

*:熱外中性子束(0.6eV-10keV)は1/Eスペクトルを仮定するとこの値の9.72倍となる。




18−c.使用上の注意など


5MW連続運転中の利用に係る照射室内及び周辺の放射線の空間線量率分布を図18
−4に示す。ビスマス面から3mは慣れた標準的な操作場所の線量率から、照射室
への立入り制限時間を週4時間以内とする。
なお、出入り口遮蔽扉の「開」の操作には、上下遮蔽扉の「閉」と重水シャッタ−
とスペクトルシフタ「満水」の状態でインタ−ロックを設定した。操作及び状況監視
は安全監視システムにより行う。これらの操作時間特性を表18−3に示す。


表18−3各機器の操作時間等の関係





18−d.照射の手順など


連続運転中の利用ては、試料に当たる中性子強度は、照射開始操作及び終了操作の
途中には変化する。操作時間特性、試料の出入れの操作手順、等の関係から、以下の
のタイミングで照射開始及び照射終了を行うことを標準とする。なお、照射時間が
短いほどこれらの操作中の変化の相対的な割合が大きくなることに配慮して照射時間
や照射モ−ドを決める必要がある。

照射開始時刻: 大型試料輸送台車により試料が待機位置に達した時刻
照射終了時刻: 大型試料輸送台車により試料が照射位置から移動を開始した時刻




図18−1
重水中性子照射設備の概略図





図18−2
大型試料輸送台車と治療用コリメ−タ





図18−3
混合照射モ−ドの中性子エネルギ−スペクトル





図18−4
重水中性子照射設備周辺の放射線線量率分布(5MW連続運転中)