10.低温照射装置(E−4)



10−a.構造及び特徴


これは水平照射孔(E−4)に設けられた低温照射専用の装置である。低温
照射装置は本体及び冷却装置と、これに付属する排気装置、ヘリウムガス圧縮機
、コ−ルドトラップ、低圧ガスホルダ−、高圧ガスタンク等よりなり、いずれも
照射孔の付近に配置されている。(図10−1参照)本装置は20K〜300K
の温度範囲でに任意の温度に自動制御できる方式であり、照射中でも物性の時間
的変を測定することが出来る。照射後、一定時間誘導放射能の冷却(約2時間)
したのち、試料を液体ヘリウム中に取り出す。

図10−1低温照射装置の概略構造図



KURの熱出力が5,000kW時における
照射特性は大体次のとおりである。

最高の熱中性子束: φth=3.5x1012n/cm2/sec
最高の高速中性子束: φf=4.3x1011n/cm2/sec
最高のガンマ線量率: Dγ=1.2x107R/hr


図10−2(右図)に照射部位における
中性子束、ガンマ線量及びカドミウム比
分布を示す。照射位置は約1〜60cm
まで利用可能である。










10−b.使用状況


所外、所内共にかなりの利用頻度が有る。




10−c.実験と操作


低温照射装置による実験者は、
研究炉部の本装置担当者と
密接な連絡をとりながら
実験を行うこと。



10−d.異常時の処置


異常事態発生の場合、直ちにKUR
運転班員、中央管理室(研究炉部の
低温照射設備担当者を含む)に連絡し、
その処置を依頼する。
なお、本装置はKURの安全系と連動
しているため、異常事態発生によって、
KURが停止することもある。
KURスクラム系に連動するものは
内圧異常及び真空度異常である。
その他の異常や故障についても
KUR運転員へ連絡すること。




10−e.照射の条件


試料は原則として、専用のアルミニュウム製カプセル(内径19mmφ,有効長約90mm)
に入れて照射する。図10−3参照。このカプセルの有効径は、一部約16mmφと
なっているので必ず図10−3を参照すること。
試料は、爆発の可能性が無く、かつG値が1,000以下のものとする。また、
核燃料物質は密封状態でトリウム10g、天然ウラン2g相当以下に限られる。
図10−4に低温照射設備の代表的スペクトルを示す。


10−f.その他


相乗り希望の場合で、実験者相互で連絡がとれている場合は、その旨KUR
実験記録に記載する。なお、この装置の利用者には、中央官吏室長あるいは
装置管理責任者の行う低温照射装置の取扱いに関する保安教育の受講が義務
づけられている。



図10−3アルミニュウム製カプセル



注):中性子束分布はKURRI−TR−287(1987)参照

図10−4低温照射設備の代表的スペクトル