KUR マルチトレーサー
◆ KURマルチトレーサーとは
◆ KURマルチトレーサーのできるまで
◆ KURマルチトレーサーの内容について
◆ KURマルチトレーサーの供給について
◆ KURマルチトレーサー供給のスケジュール
◆ KURマルチトレーサーに関連する発表・論文
○ トレーサーとは?
トレーサー(tracer)とは、ある元素の動きを調べるためにマーク(印)をつけられたものの事を言います。渡り鳥に小型の発信機をつけて、その移動の様子を観察するのに似ています。しかし元素の動きを調べるのに、原子や分子に発信機を取り付けるわけにはいきません。それではどうやって原子や分子にマークをつければよいでしょうか?そこで考え出されたのが放射性同位体(RI)を用いたトレーサーです。放射性同位元素は放射性でない元素とその化学的な性質は同じです(厳密には違いますが)。ですから、物質をよく透過するガンマ線を放出する放射性同位元素をトレーサーとして用いれば、ガンマ線を測定することにより、目的の元素が今どこに存在しているのかを知ることができます。また、ガンマ線の持つエネルギーは放射性同位元素の種類(核種)によって違い、その測定分解能は測定機器が進歩しており非常に高精度なので、複数の元素についてその動きを調べたい場合にも利用することができます。
○ マルチトレーサーとは?
マルチトレーサー(multitracer)とは上でも触れましたが、一度に複数の元素についてその動きを調べたい場合などに用いるもので、2種類以上の放射性同位元素が含まれたトレーサーのことです。マルチトレーサーを利用する利点としては、同じ環境で、一度の実験で、複数の元素の動きについての情報が得られる点が挙げられます。
日本では理化学研究所において、このマルチトレーサーの製造について10年以上研究されており、理研リングサイクロトロン加速器を用いた重イオン核反応を利用して、マルチトレーサーの製造及びユーザーへの供給がされています。
○ KURマルチトレーサーとは
KUR(京都大学原子炉実験所)の我々の研究グループでは、原子炉の中性子を用いたマルチトレーサー製造手法の開発を行ってきました。理研のグループが加速器を用いた重イオン核反応を利用してマルチトレーサーを製造しているのに対して、我々のグループではウラン-235と中性子との反応によって起こる核分裂反応を利用してマルチトレーサーを製造する手法を試みました。
ウラン-235に熱中性子を照射すると核分裂が起こり、二つの核分裂生成物ができます。この核分裂生成物はほとんどが放射性同位体であり、これらを収集することによりマルチトレーサーを作ることができます。このような核反応を利用したトレーサーの製造は、一般的な放射性シングルトレーサー(一種類のトレーサー)を作る方法として用いられる中性子放射化(目的元素に中性子を照射することにより、放射性同位体をつくる)と違い、キャリアー(carrier)を含まない状態(carrier free)でトレーサーを作ることができるので、極微量の元素の追跡に非常に効果的です。
◆ お問い合わせ先 ◆
takamiya@HL.rri.kyoto-u.ac.jp
0724-51-2460 (高宮)